掲載日:2022年3月14日(月)
開催日:2021年11月22日(金)
レポート
セミナー

2021年11月12日。コワーキングスペースで、「デジタル技術を活用したビジネスイノベーションセミナー」を開催しました。登壇者は三重県伊勢市の老舗食堂「ゑびや大食堂」の代表、小田島春樹氏です。
伊勢の老舗飲食店 ゑびや
ゑびやは創業約150年の老舗食堂です。現在は、テイクアウト、お土産販売、飲食店、ECサイトなどを運営しています。と同時に、店舗にAIを活用するとどのくらい生産性が上がるのか、AIや機械学習の活用研究なども長年やってきました。私でちょうど5代目になります。

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時代の変化合わせてビジネスを変える ~データ経営による店舗運営~
ゑびやは10年ほど前まで、“そろばん”と“手切りの食券、海の家のような店内の、「THE 日本の家族経営の飲食店」でした。この店舗を良くしたい、いろいろなことを試してみたい、日々の経営作業を効率化したい。そうした強い思いのもと、徹底したテクノロジーの活用を推進していきました。
切り口は二つありました。一つは「売り上げを上げるIT化(AI、BI、IoT)」。もう一つは「経営を楽にするIT化(バックオフィスのアウトソーシング)です。
まず売り上げを上げるために紙の台帳を紐解きました。しかし、これが面倒くさい。紙ですと数字の連携が見えづらいのです。そこでExcelで記録を始めました。すると今度はExcelが複雑化し、自分しかわからないものになっていきました。これでは属人化し、引き継ぎなどが大変になってしまいます。そこですべてのデータベースをつなげることを思いつきました。人の手を介さずとも売り上げが入ってくる仕組みを作ったのです。こうした仕組みを作ることで、手間や時間を省けるようになり、集めてきたデータで、売り上げサマリを作ったり、来客予測、需要予測をすることができるようになりました。
リアル店舗のデータ分析の仕組みを作り、勘と経験の世界を塗り替える
予測があることは大事です。1週間、どういう客数になるかわかれば、発注に役立てられる。1か月先がわかればシフトの組み方を変えられる。年間がわかれば事業予測が立てられる。この予測も、誰かの属人的なロジックではなく、汎用化したものを打ち立てることで、誰でも簡単に予測できるようになります。
その他にも、たとえば天候が良いと売り上げが上がるといったことがわかれば、天候のデータと来客数の相関を調べる。入店したお客様と、街を通ったお客様を見て、マーケットのシェアを予測する。原価の見える化をして、どういった商品構成にすると原価がよくなるのか考える。お客様にいただいたアンケートを解析して、自分たちの強みやウィークポイントを把握する。社内のコミュニケーションツールでのやりとりから、従業員のエンゲージメントを見ていく。そうした様々な取り組みを通じて、売り上げを管理する、未来の数字を見えるようにする、自分たちのマーケットシェアを知り、商圏の状況を知り、どういった場合にどういった商品が売れていくのかを知っていく。こんなことをずっとやってきました。
ゑびやで取り組んだDXを他の企業へ
ゑびやのために作った仕組みを汎化して、世の中に役立てようと考えました。店舗ビジネスのAIや画像解析などのテクノロジーを社会実装する。そうした会社はまだなかったので、そういう思いでEBILABという企業を起業しました。飲食、小売業などの店舗であればどなたでも使える仕組み作りをしています。
こうした取り組みは海外でも珍しいらしく、米国Microsoft corporationの支援企業(Microsoft For Startups)に選定されました。ほかにも、ラスベガスで「AIを最もうまく活用できている企業」に選ばれました。

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なぜ商売にデータ活用&DX化する必要があるのか?
正しい時代認識を持つことが大切、という言葉が大好きです。正しい時代認識とは、たとえば人口減少です。伊勢神宮のマーケットも人口減少とともに縮小していきます。生産年齢人口も減っていきます。働く人の取り合いになり、飲食業界の採用が難しくなります。また他国に比べ、日本は生産性が低いです。そうしたことを踏まえて考えると、やはり変わるしかない。活用&DX化は、やるしかない。もはやタイミングの問題でしかないのではないでしょうか。

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地域、世界を超えて仲間たちが繋がり仕事をする楽しさと葛藤
いろいろな取り組みを通じて、売り上げも利益もすごく伸ばすことができました。仕事の効率性もです。週休2日制、有給休暇プラスアルファで特別有給休暇の取得、給料アップも成功した。それが、自分たちの取り組みの成果だと思っています。
問題を解決する手段が、テクノロジーなのか、デザインなのか、ブランディングなのか、組織論なのか、製品なのか。企業によって全く異なると思います。ただ、何かを見つけて、その何かを徹底して推進することができれば、どの地域でも、企業経営を進化させることができるという風に思っています。時代に対する向き合い方、考え方、という観点で、私たちの活動は参考になるかもしれません。
経営者自身の考え方やマインド、ここがほんの少し変わるだけで、人も組織も大きく変わっていくのではないでしょうか。私はそう確信しています。
(参考)ゑびや_EBILAB 小田島春樹氏のYoutubeチャンネルがあります。
小田島氏の話をもっと聞きたい方は、YouTube「えびや エビラボ」で検索ください。
次回は「#4 地域スタートアップ」
続きます!