第五回 デジタル時代における地域企業と金融機関の関わり

開催日:2019年11月26日

レポート

  • セミナー

今回レポ―トするイベントは、11月26日に開催した、第五回 デジタル技術を活用したビジネスイノベーションセミナー 「デジタル時代における地域企業と金融機関の関わり」 です。
製造、観光、医療、ベンチャー創業等を支援する地域活性化関連のファンドが拡充する中、様々な成果が各地で生まれています。特に、IoT・AIを中心とした デジタル分野への投資は期待が高く、市場が活性化しています。その反面、採算が読みづらく、多くのリスクを抱え、予想していたリターンを得られないケースも見受けられます。
経営資源である、ヒト、モノ、カネ、情報をデジタル時代にどのように適用していくべきか。 変革が求められる中で、地域を拠点にした企業と金融機関はどのような関わりを持つべきか。つくば市に中核拠点を置き、AI事業を展開中のO2グループのLIGHTz社と、そのLIGHTz社と連携中の筑波銀行の共創活動で培った知見を元に、事業を推進していく上での重要なポイントをご紹介します。

地域貢献

先駆者の知を次世代につなぐ

株式会社LIGHTz(ライツ)は、3年前に茨城の筑波に立ち上げたAIのベンチャー企業です。 今回登壇していただいた、株式会社LIGHTz 乙部 信吾氏に、どういうストーリで地域貢献しているのか、自分たちの夢の実現についてどのようなことを行っているのかをお話していただきました。
LIGHTzが取り組んでいる事業内容は、 「ス ペ シ ャ リ ス ト 思 考 の A I 化 、 活 用」 です。
AI技術を活用し 「スペシャリストの知を次世代の“気づき”に繋げる」 をご支援をしているとのことでした。
人の考えていることをそのまま技術的に取り出すということは難しく、技術を取り出せたとしても、それをAIのシステムに繋げていくことも同じくらい難しい事だそうです。 それを可能にしているのが、LIGHTzが活用している次世代につなぐAI技術 『ORGENIUS(オルジニアス)』 です。
特徴としては、BrainModel(ブレインモデル)と言われる、言葉のネットワークを採用しています。 言葉にはそれぞれ 重力 のようなものを持ち合わせており、それぞれが引き合う関係になっているとのこと。 その 言葉同士の繋がり と、 言葉の繋がりの強さ をモデル化してAIのシステムを実現しているようです。
一般的なAIの作りは、 統計処理 や、 数学的アルゴリズム ですが、LIGHTzでは 熟達者からヒアリングをして言語解析をしてAIをつくる という、大きな特徴があるようです。
自分が答えた言葉をそのままAIに採用されているため、 入りやすいAI という特性があり 起業して3年目ですが、多くのユーザーに使って頂けているとのことでした。

「伝統的ものづくり」 のデジタル化

今年度から「伝統的ものづくり」 のデジタル化ということで、他の地方に地域連携を結びながら事業展開を進めているとのことでした。 今、AIのベンチャーでキャッシュフローがしっかり作れているところはかなり少なく、LIGHTzは地域の中で堅実にやっていくために、黒字事業を実現することを考えて展開しているとのことでした。 また、進出モデルして、「本社に対して支社という考え方ではなく地域を代表する拠点(ランドマーク)を作る」、「現地採用のメンバだけで会社を構成する」事で、地域の人に応援してもらえる体制を取っているとのことでした。
「伝統的ものづくり」 の製造工程にAIを入れている例として、一般的な生産技術のデータ解析で明らかにしていく解析では、金型に200~300個のセンサーが必要になるが、 BrainModelを入れた場合、 熟達者がどういうことを考えているかの予測のアルゴリズム をいれているため、センサーの数は20個程度で済むとのこと。
それほど日本のモノづくりはしっかり積んだ経験が重要で、それを活用できれば、ビッグデータに頼らない仕組みでも提供でいるということでした。
AIの技術として 数値系のAI・言語系のAI は、全く違う技術領域であり、それをどちらも活用している企業はあまりいないとそうです。 「データだけで示されてもわからない」、「言語だけで示されてもエビデンスがない」、 そこのを繋げることに価値があることに着目しているとお話していただきました。

また、「伝統的ものづくり」 の地域貢献の背景には、乙部氏が震災のボランティアで訪れた被災地で、「今、何が一番欲しいのか?」の問いに「仕事」と答えられ 仕事があるからその地域で暮らしていける とうい言葉の重さを体験したからだと教えていただきました。

ものづくり支援

次に、LIGHTzのグループ会社である株式会社O2の青木氏に、スタートアップの支援についてお話をしていただきました。
現状として、主要9か国の中で「モノづくりのイノベーション力」では日本は最下位だそうです。 また、既存事業へのR&D投資志向が7割で、既存技術にリソースを割いているのが日本の現状だということでした。
この様な状況を打開するの形で注目されているのが スタートアップ であり、O2はそこにリソースを割いていきたいということでした。
その一つの活動として、株式会社浜野製作所と資本・業務提携についてお話をしていただきました。
スタートアップモノづくりベンチャーの方々はソフトウェアはできるが、ハードウェアとして具現化するすべを知らないため、ベンチャーが駆け込む先として浜野製作所が注目されていました。
ただ、ハードウェアを具現化しても、量産する際には、ものの作り方、設計の思想を変えていかないといけない 量産の壁 という問題があり、その壁を一緒に乗り越えていこうという思いでO2が参加されたということでした。 企画構想の段階から量産化までシームレスにつなげ、 ものづくり  と  ことづくり ができる人材を育てていきたいという思いで、ものづくり支援の支援に参加されたということでした。

パネルディスカッション

最後に、"筑波銀行 渡辺氏"、 "株式会社LIGHTz 乙部氏"、 "株式会社O2 青木氏"、 "富士通株式会社 飯田氏(モデレーター)" の4名で行われた パネルディスカッション の様子です。 4名で事前ミーティングした時に、飯田氏は「投資家、事業化は隠し事が多くなる印象がある中、素直に良いことも悪いことをざっくばらんにお話しされているいい関係。 この関係性はどうやって生まれるだろう? 」と感じたそうです。

出会った時の皆さんの印象は?

渡辺氏から見た、乙部氏・青木氏の印象は?

乙部さんは、ローカル大好きな人ですね。そして、O2グループが、新規の企業を本気で何とかしなくちゃという地域を大切にする気持ちが伝わり、即座に惚れこんでしまいました。 また、AIシステムの話は他の人から話を聞いていましたが、アルゴリズムの話になると複雑で理解しにくいところもあったのですが、LIGHTzさんからBrainModelのAIの説明を聞いたときは腑に落ちました。

乙部氏・青木氏から見た、渡辺氏の印象は?

茨城をどう盛り上げていくかを凄く考えている方で、いろんな地域の振興に関する活動とか、様々な協会の会長職を歴任されていて 茨城県博士 というイメージがありました。 銀行マンとして付き合っている感覚ではなく 地域を愛する気持ちをどういうふうに形にすればいいか を考えた結果として資金面で事業を応援してくれる関係になりました。

スタートアップとして気を付けていることは?

まずは、 直球勝負 にこだわることを考えています。 日本の中でグローバルに通用するAIをどの場所で作るのが一番アピールになるかと考えたとき、大都市で作っただけではブランドはつくけど がつかないと思いました。 そこで日本の中のNo1のアカデミックな街である茨城の筑波で作れば がつくと考えました。 端的に説明できることでしか証明できなことがグローバルでの競争だと思っており、色々な説明が必要な変化球が通じるのは日本人だけじゃないかなと思うところがあり、あえて直球勝負にこだわっています。
ただ、地域創生という中では、その直球勝負を徹底するには難かしく感じる面もありました。
地域に進出する際には、その地域の人としかやり取りをしない徹底をしてきましたが、オフィス立ち上げる時に、家具や文房具を買うのも地元の人としかやり取りをしないと徹底しても、外資や他の地域の人が入ってくるのが現状で、そのキックアウトにものすごく苦労しました。 通常の生活の中で、地域創生をどれだけ声高に歌ったとしても、どれだけ外資であったり中央資本が入り込んだ生活であるというこをもう一回しっかり見直さないと、直球勝負そのものができないと苦労することもあります。

スタートアップの支援を決めるポイントは?

目利きのポイントとしては企業さんが ストーリー を持っているかどうかを かなり重要視しています。技術的バックボーンがあるとか、資本があるとかは2の次3の次です。 そのモノ、サービスを使っていだだこうと思ってるユーザーの方たちに、どんな体験、経験をさせることができるのかが素直に入ってこないとやっても意味がないと思うので、ストーリーを重要視しています。

今後皆さんが期待することは?

渡辺氏

できれば、茨城の中小企業さんに資金を支援してコンサルティングする関係だけではなく、 共存していく関係を築きたいと思っています。 必要があれば、事業承継ができない会社を買い取って再生することも考え、そういうビジネスモデルの間に銀行も入って、一緒に協創することができれば、地域の産業を支えることもできたら良いと思っています。

乙部氏

金融的な戦い方があると思うので、我々のビジネスとしての戦い方を切磋琢磨できる環境がもっとあれば良いと思っています。 今日本もスタートアップの支援も増えてきているので、今後面白くなってくると思っています。 金融機関側から財務的にけしかけていただいて、お金儲けがしっかりできないと物事が良くならないと思っているので、 次の世代の地盤を作る上でもお金儲けをきっちりさせてもらいたいと考えています。

青木氏

スタートアップ、ベンチャーを支えるには、エコシステムが重要になってくると考えています。 技術的な支援、財務的な支援が、事業をどう構築してくのかの支援が大事になってきますが、欧米的なスタイルをまねるのでなく、日本のスタイルを構築をしていく必要がり、金融機関のリソース、知見をご教授していただきたいと思っています。

スタートアップ企業
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株式会社LIGHTz
CEO
乙部 信吾 氏
ものづくり支援コンサルタント

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株式会社O2
マネージャー 
青木 孝綱 氏
融資、投資で経営を支える
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株式会社筑波銀行 常務執行役員  渡辺 一洋
モデレーター
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株式会社富士通
ラーニングメディア
飯田 哲也

グラメモ:
セミナーで話されたことのメモ書きです。参加されたかた、参加できなかったかたに、当日の内容を少しでもお伝えしたいと、手描きで記録しました。
ふりかえり、内容確認にお役立てください。

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