第六回 共有型経済が切り拓く、新しいビジネスの姿

DX時代におけるシェアリングエコノミーが地域にもたらすもの

開催日:2019年12月16日

レポート

  • セミナー

いま日本は、デジタル技術の進展により大きな変革期を迎えています。 シェアリング という考え方が少しづつ浸透しはじめ、ビジネスや日々の暮らし、仕事のしかたが大きく変わろうとしています。必要なものは自前で揃えるのではなく、互いに共有する。たとえば人手不足は人材のシェアリング、稼働率の低さは設備共有で解決する、といった考え方です。政府、自治体、企業、個人、シェア事業者、それぞれが境界を超えて、新たな経済圏やコミュニティを作り上げ、地域、あるいは地域企業の課題解決に乗り出しました。
登壇者は、株式会社富士通総研の岩坪 慶哲氏です。 新しい技術が溢れる、このDX時代に、地域企業の事業変革につながるヒントを様々な取り組み事例を交えてご紹介していただきました。

DX時代とは?

目的は?

DXとは、 Digital Transformation の略で、簡単に言うとデータとデジタル技術を活用して 企業の競争力を高める ことです。 ここでの競争力とは、「コスト削減」や「売上の拡大」を指し、それを実現する手段として、AI、IoT、ビッグデータ、ロボット等を用いていきます。 近頃、多くの企業はこのキーワードで何か始めないといけないなという傾向がありますが、AI、IoT、ビッグデータ、ロボット等はあくまでも手段であって、これを使うことが目的になってはいけません。 企業の競争力を高める ことが目的なので、 どこを目指すのか が重要になります。 目的の例として以下のような内容が挙げられます。

  • 業務の効率化
  • 働き方を改革して企業としての生産性を高めてコストを削減する
  • お客さんとの接点にモバイルやソーシャルを活用してより高めていく

デジタル化って何?

デジタル化は今に始まった言葉ではありません。 "レコード"→"CD"もデジタル化であり、昔からデジタル化してコンテンツを管理していました。 ただ、ここ最近のデジタル化はだいぶ変化してきています。
例えば、今のデジタル化は クラウドサービスを使って聴きたいときに聴きたい音楽が聴ける です。
昔は、 モノ を単にデジタル化にするだけだったのが、今は、 経験 体験 をいかにデジタルに作りあげるかに変わってきました。 消費者、生活者の視点から見ると、今までは モノ に対してお金を支払っていたのが、 経験 体験 に対してお金を支払う時代になってきています。

なぜ、 モノ から コト に進んでいったのか?その進化の理由は以下のことが挙げられます。

モノ→コトへの進化の理由
  1. 技術的な背景として、スマホ・クラウドが前提になってきた世の中になっている
  2. 社会的な背景として、作れば売れるという時代が終わりを迎えている
  3. 個人個人で価値観が多様化している

「個人個人で価値観が多様化」という点では、ミレニアル世代の登場があげられます。 インターネットやパソコンが普及した状態で育ってきた(デジタルネイティブ)世代には以下のような傾向があると言われています。

デジタルネイティブ世代の傾向
  1. モノに対して執着心がない
  2. ストーリーが大事
  3. 社会貢献したい
  4. 集まったデータから口コミを信用する
  5. 自分で持たずにシェアをしたい

また、個人だけでなく、企業でもデジタルネイティブの企業が誕生し、今では、GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)等のデジタル・プラットフォーマーが世界の先頭を走っています。

今DXと言われている時代は、以前は存在しなかったプラットーフォームが、社会や、企業、個人にいきわたりその結果として、スマホ・クラウドを前提として仕組みが生まれ変わっている時代になっています。

シェアリングエコノミーってなに?

シェアリングエコノミーは、日本では共有型経済と言われています。 エコノミーはお金、ビジネスという感覚があるかもしれませんが、 「使っていないから使いたければ使っていいよ」 「私はこういうことできるからやってあげるよ」 というモノを生み出すことができれば、利用したい人から 「使わせてもらう代わりにいくらか払いたい」 という関係が生まれます。 エコノミーよりかは、どちらかというとコミュニティーに捉えた方が近いかもしれません。 利用したい人と、資産や能力を生み出せる人をマッチングさせて 「使われていない資産や能力を、使いたい人に融通しあうこと」 これが シェアリングエコノミー です。

レンタルと、シェアリングの違いは、 レンタルは 貸すためにモノを持っている サービスであり、シェアリングは 使われていない時間にモノを貸す サービスである違いがあります。
また、シェアリングエコノミーは、提供者、利用者だけではなく、社会に対しての「三方良し」の可能性があります。

事例紹介

シェアリングエコノミーを用いた事例の紹介です。

Uber

提供者
空席のある
自家用車のドライバー
利用者
移動したい人

移動したい人が、スマホで出発点と目的地を入力して、サービスに登録しているドライバーとマッチングさせるサービスです。 アプリを使えば、言葉が通じなくてもタクシーを呼ぶわずらわしさもなくなり、一部サービス展開されていない国もありますが、どんな国でもアプリ一つでできてしまいます。

airbnb

提供者
空き部屋を持っている人
利用者
宿泊したい旅行客

岩坪氏も実際に使っていて、家族でハワイ旅行に行ったとき、ワイキキからちょっと外れたプール付き一軒家を比較的安い値段で利用したそうです。 安く利用できるだけではなく、地元の人と同じ生活を体験することができたりするので、普段では体験できないことも体験できたりすると話していました。

福島県の喜多方市(地域課題を解決する)

提供者
店舗、オフィスの駐車場
利用者
花見観光客
日本で、シェアリングエコノミーを使って地域課題を解決したサービスの事例をご紹介します。
福島県の喜多方市は しだれ桜 が有名ですが、花見の時期になるとこのような問題が発生していました。
  • 花見の時期に駐車場がなく困っている
  • 違法駐車に困っている
  • 渋滞問題に困っている
ただ、花見の時期のためだけに駐車場を作るのはコストパフォーマンスが悪いため、 この様な問題を、 「休日の従業員用の駐車場」 「店舗が休みの駐車場」 を貸し出すことで問題を解決した事例があります。

問題や課題点は?

シェアリングが普及するとモノが売れなくなる問題があるのでは?というご意見もいただきます。 例えば、カーシェアを利用すると車を買わなくなるのでは?です。 まだシェアリングが始まって年数が少ないので見えていないところもありますが、カーシェアを使うと、利用シーンを体験してもらえるので車の購入欲が生まれる傾向も出ているようです。
また、メルカリを利用する場合、後に売ることを想定する事で、今までより「ワンランク上のモノを買おうという」考えが生まれたりもします。 シェアリングが普及するとモノが売れなくなる側面があるかもしれませんが、ものによっては購入欲が高まったり、購入単価が高まったりする傾向もあると思います。
個人 to 個人でシェアリングはトラブルが心配というご意見もいただきます。 この様な問題は、口コミや、レーティング等を用いてい信頼できる人として安心してご利用できるような工夫をしています。 シェアリングエコノミーは、新しいサービスなので課題はありますが、サービスに合わせて体制を色々取りながら進めています。


どうやって活用していくの?

シェアリングエコノミーを体験するには、まずは利用者から始めてみるのがいいと思います。 提供者としては、身の回りのある、使っていない モノ スペース 技術 を探してみる。そして、業界の問題点に目を付けてプラットフォームを作って解決してみる。
また、利用者、提供者ではなく、 「利用者、提供者」をサポートすることができないか とういう視点で探してみるのもいいと思います。 一つのシェアリングサービスが生まれると、その周りに新しいサービス、(エコシステム)が形成されてきます。 例えば、airbnbの民泊のサービスだと、 「人を泊める前にリノベーションしておこう」、「人が寝泊まりするのでもっといいベットを買おう」、「Wifi設備作って環境よくしよう」などという発想が生まれてきます。 また、 「鍵の受け渡しを対面しなくてもコンビニで安心安全に受け渡したい」 という発想からサービスも実際に生まれています。 このように一つのサービスに着目するだけではなくて、周りにどんな新しいニーズができて、 そこで自分がなにができるかと考えてみると新しいサービスが生まれる可能性があります。 共有型経済と言われていますが、利用者、提供者だけではなく、そこに対して、 自分がどういうかたちでなにを提供してみたらいいだろうかを考えてみるのもいいかもしれません。

最後に、シェアリングエコノミーが生み出すものとして、これから企業の大小が関係なくなるのではないかと思うところがあります。 今までは、経営資源として人、機材、広告を打つなどできる会社が世界で認知できる可能性がありましたが、リソースを売っていた時代から、これからアイデア、スピードがものをいい、顧客にとって何が価値になるかを提供できればこれから企業の大小なく 色々な企業がチャレンジできる時代 になってきてると思います。

Guest speaker

【講演者】
株式会社富士通総研
コンサルティング本部DIビジネス室
マネージャー
岩坪 慶哲 氏

【略歴】
2003年に富士通(株)に入社後、主にプロジェクトマネージャーとして中央官庁向け システムの開発・保守プロジェクトに従事。2015年より内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室に出向。2017年1月、同室にシェアリングエコノミー促進室が設置されたのに伴い併任。シェアリングエコノミーに関する政府全体窓口として事業者/自治体等の相談対応や政府有識者会議の事務局、プラットフォーマー向けガイドラインの策定、 地域課題の解決に向けた活用事例集「シェア・ニッポン100」の取りまとめ等を実施。2018年に富士通に復帰後、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進や新規ビジネス創出に取り組む企業に対してコンサルティングサービスを提供。2019年8月より現職。

グラメモ:
セミナーで話されたことのメモ書きです。参加されたかた、参加できなかったかたに、当日の内容を少しでもお伝えしたいと、手描きで記録しました。
ふりかえり、内容確認にお役立てください。

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