R06(2024)年度
陶芸学科
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『春を待つ』
ティーポット、カップとソーサー、茶香炉の紅茶セットである。20世紀にはモダンデザインという考え方が広まり巨大な市場を形成したが、その花形の一つがカップとソーサー、つまりお茶のセットである。それシャープな線と面の構成によることが中心であったが、中にその対局、チョット太めにすべてマールく、という感じが少しある。この作品はまさにそれ。ボディー、皿の縁、そして蓋まで太めでマールい。香炉も全く太めの卵である。そこにわずかにへこみを作り釉をため込む。わずかに水ぬるむ雪解けのイメージである。なるほど太目のマールいの馥郁たる気分はそのためだったか。
笠間陶芸大学校 学校長 金子賢治
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『ハワノタ』
ともかくワサワサユサユサ騒がしい饒舌、過剰である。そして過剰に装飾的でもある。異形な過剰装飾のパワー。これは単に有機生命体が湧き出てきたような特異な形にのみあるわけではない。「成形時の手の感覚とパーツの組み方、それに逆らう土の動きや重力」と語るように、選んだ素材が一つに限られていることからどうしようもなく生じる「土から陶へ」のプロセスとの親和と反発、そして「作りたい形」との相克。これが摩擦係数を増大させ、超えていこうとする制作意志をいやがうえにも高める。作品がオーラのように出てくるのはこのパワーである。
笠間陶芸大学校 学校長 金子賢治