R05(2023)年度
陶芸学科
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『スプリング』
ワインのディキャンターとグラスのセットである。両方とも下方の先が尖っているのでスタンドに置かれている。ディキャンターセットの方はアールヌーヴォーと見紛うほどの曲線に満ちていて、スタンドはカラーの花弁形と鳥の尻尾形の二重になっている。一方グラスのスタンドは梵音具(ぼんおんぐ)の布団のような形で、バラエティーに富んだ形をしているのであるが、それを瀟洒(しょうしゃ)な感覚に満ちたフォルムでまとめていることがこの作者の力量である。
笠間陶芸大学校 学校長 金子賢治
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『花笑み ―春―』
「花笑み ―冬―」と一対のこの作品は冬から春になり蕾が開き、花が咲きこぼれた姿を描いている。もともと「密集」と「装飾」をテーマに自主制作に取り組んできただけあって、何よりも注目すべきは咲きこぼれる花の表現である。ほぼ五~六弁化の花が内部から這い上がり蕾の外に咲き登り、割れた蕾の片側にこんもりと花群の集団を作る。この方寄席のバランス感覚が見どころである。花弁一枚一枚の内外の線描の描き分け、千変万化の柔らかい感触が、釉一色のモノクロームながら昆虫を誘うような艶やかな色感を予想させる。穏やかに波打つようにそよぐ様がそう思わせるのである。
笠間陶芸大学校 学校長 金子賢治