H28(2016)年度

研究科

『印』

宮本 果林 Karin Miyamoto(研究科1期生)

2016年度 研究科優秀制作賞

陶の世界における具象的なかたちは、例えば江戸時代以降のいわゆる「細工物」と呼ばれる世界に、鳩や鶏、布袋や唐獅子など様々な例がある。また近代に入ると「陶彫」と呼ばれる兔や猪がつくられる。宮川香山の蟹は器付きだが重要文化財の指定まで受けている。つまり具象的な造形は、陶の世界でもかなりポピュラーな領域には違いない。
しかし、モチーフが具体的に特定できるものほど、作者の独自性を盛り込む際に困難も生じる。さまざまな動物の形状をなぞり「再現」するだけでは作家の「表現」には至らない。宮本果林は一年間の研修を通じてそのことに気づき、今、まさに具体的なモチーフをベースにしながらも新次元の自分の表現へと変換していく造形的改革の渦中に在る。亀裂の生じた土のパーツを動物のボディの外皮に用いることも、その試みの一つであろう。
器用な作り手だけに、再現力のみで観る者をそれなりに感嘆させる道もありえるが、そこに甘んじることなく、土の造形を自身の表現として捉えなおそうとする姿勢が、今回の作品の随所に見出される。その強い意志に、大きな期待を寄せるのである。

評:外館和子