「デジタルトランスフォーメーションの動向と新しい世界の展望」
#1 DX最新動向編

掲載日:2021年09月13日(月)

開催日:2021年8月10日(火)

レポート

  • セミナー

多様な業界におけるデジタルによる事業変革の事例 #6 DX最新動向

コワーキングスペースでは、デジタル技術を活用して業務や事業を変革する、先端的な取り組みご紹介するイベントを企画しています。題して 「デジタル技術を活用したビジネスイノベーションセミナー 」。2021年度は全6回シリーズで開催します。 第1回のテーマは「DX最新動向」。富士通でエグゼクティブディレクターをつとめる 高重吉邦 氏が、 デジタル時代における人の重要性 について講演しました。デジタル化を阻む日本の課題に切り込み、グローバルな視点でデジタルトランスフォーメーションのこれからを考察します。

あらゆる業界でデジタル化が進行している

様々なイノベーションを生み出すと同時に、既存の事業や業界構造を破壊する、デジタルトランスフォーメーション(DX)。富士通のグローバル調査2021によれば、世界9か国の従来型企業(非ネット専業)の83%がDXを検討、73%が実践、39%が成果を実現しているという。対して日本は、66%の企業が検討、48%が実践。成果を出している企業は16%と、大幅な遅れをとっている。

非ネット専業の従来型企業(9か国:日本、アメリカ、オーストラリア、イギリス、ドイツ、スペイン、フランス、シンガポール、中国。1200名のビジネスリーダーを対象とした調査。2021年2月に実施)

日本のDXは危機的状況にある

日本のDXは、大半が「効率化・コスト削減」に向けられている。例年この傾向にある。ビジネスが産業化時代のやり方を色濃く残していることが見て取れる。
海外はどうか。「顧客体験の向上」「経営スピードの向上」「効率化・コスト削減」。この結果から、海外のDXは社外・社内、その両面に向けて、進められていることがわかる。
世界の中で日本は大きく立ち遅れ、デジタルをやらなければ生き残れない。

どのようにDXを進めていけばよいのか

ではどうやってDXを進めていけばよいのか。私は人の力が重要だと考えている。
DXは必ずしもデジタル技術を導入することが主眼ではない。AIやIoTといったデジタル技術を使えばDXになるわけではなく、デジタル技術を活用して、どのような変革を成し遂げたいのか、何を目的にやっているのか。これが大切だ。これを推進するためには、従来の産業型ビジネスのやり方は通用しない。デジタルの時代には、デジタルを身体の筋肉のような使い方をしなくてはならない。どんなやり方か。ここで、これまで行ってきた調査から、DXの成功と相関性の高い組織の特徴を紹介しよう。


DXの成功と相関性の高い組織の能力 ~デジタルマッスル~

1.リーダーシップ 経営者がDXを優先課題として捉えている。
2.人材のエンパワーメント デジタル人材を育成し、権限を与えている。
3.アジャイルな文化 イノベーションに挑戦、変化に機敏に対応する。
4.エコシステム 社外パートナーと手を組み、エコシステムをつくる。
5.データからの価値創出 データからビジネスを生み出す。
6.ビジネスの融合 デジタルをビジネスプロセスに組み込み駆動していく。

これら6つの能力が強いのが、パワフルな組織だ。より強いデジタルマッスルを持つ企業が、より大きいDXの成果を上げている。

パンデミックへの対応とデジタルマッスル

パンデミックにうまく対応できた企業に、その理由を尋ねた。答えはこうだ。

1位 アジャイルに対応した。
2位 デジタル化にすでに対応できていた。対応を加速した。
3位 従業員のウェルビーイングを最優先した。

上記は、これらの企業がデジタルマッスルの高い組織能力をもってパンデミックに対応できたことを表している。

やはり、大切なのは、アジャイル(変化への対応)、デジタル化、そして人なのである。デジタル時代の新しい筋肉の使い方を身に付けること、デジタルマッスルを鍛えることが、DXを進めていくためには非常に重要なのだ。

新しい世界での優先課題は何か?

常識が通用しない、不確実な世界を生き延びるには、「変化への対応力=レジリエンス」が最優先課題であろう。仮説を立てて、すばやく検証。実行に移すといった、アジリティの強化は不可欠。また、過去の常識・データではなく、リアルタイムのデータに基づく予測・判断すること。さらに、いま起こりつつある変化のシグナルを機敏にキャッチすることが重要である。

パンデミック後の世界 ~信頼のビジネスと社会へ~

デジタルトランスフォーメーションには3つのステップがある。第一のステップはに「デジタルマッスル」。筋肉を鍛える。デジタル化を通じて変化への対応力、レジリエンスを強化していくこと。第二のステップは、社会により大きな価値をもたらすよう、現業のビジネスを変革していくこと。第三のステップは、エコシステム型ビジネスへの進化。 もっと社会的な価値を共創(Co-Create)していこうということ。

この先にあるのは、いろいろなエコシステムがつながる、再生型の社会ではないか。従来の縦割りの産業構造は崩れ、人が必要とする価値を生み出す、さまざまなエコシステムが生まれてくる。そのエコシステムがデータでつながる。そのデータが、きちんと信頼できるものである。きちんとセキュリティで守られている。
さらには、価値あるデータ(非財務的な無形の価値)が、きちんと評価されて、たとえばブロックチェーンのトークンのような形で、エコシステムを巡っていく。それにより、生活者、消費者、企業が行動を変えていく。そんな再生型の社会、環境が抱える困難な課題が解決されていく社会になっていくのではないか。

Guest speaker
【講演者】
高重 吉邦 氏

富士通株式会社
エグゼクティブディレクター

グラメモ:セミナーの様子をメモしました。
参加されたかた、参加できなかったかたに、少しでもお伝えしたいと、手描きで記録したものです。ふりかえり、内容確認にお役立てください。

グラメモ