第四回 ソフトウェア業界から見る宇宙産業の拡がり
~中小企業参入の可能性~

開催日:2019年10月23日

レポート

  • セミナー

2018年8月、茨城県は「 いばらぎ宇宙ビジネス創造拠点プロジェクト 」を発表しました。宇宙ビジネスをワンストップで支援するプラットフォームを新設し、宇宙ビジネスを拡げる「場」をつくることで、 県内企業の宇宙ビジネスへの新規参入を支援 する、 国内初の取り組み です。

さかのぼること2年前(2016年8月)、福井県で超小型人工衛星の打ち上げプロジェクトが立ち上がりました。県内企業が中心となり、 自治体と共同で人工衛星を打ち上げる という、「県民衛星プロジェクト」です。宇宙を舞台に 地方発の革新的なビジネスモデル創出を目指す 、こちらも全国で初めての試みです。

今回のセミナーでは、地方発宇宙ビジネスの先駆けである、 福井県民衛星技術研究組合の理事長、進藤哲次氏 をお招きし、足掛け4年に渡る 活動から得た知見から、宇宙開発事業に取り組む覚悟、展望、志についてあますところなくお話しいただきます!

なぜ地方発宇宙ビジネスを目指すのか

福井県の基幹産業は、繊維やメガネです。その延長線上ではない、 新たな領域に挑戦 したいと考えました。これは当時知事であられた、西川氏の意向でもあります。

ただ、最初から宇宙で行こうと決めていた訳ではありません。なにしろ、宇宙は莫大な費用がかかります。例えば人工衛星です。大型の場合、つくるだけで数百億円(300億~500億)。打ち上げ費用も、当時は重さに比例すると言われていて、100kgあたり2億円。1tですと、20億円かかります。

つくって打ち上げるのにそれだけかかるわけですから、衛星データを利用するのも大変高額。たとえば10km四方の衛星写真を1枚撮ると、かかる費用は30万円と言われてました。これではビジネスはムリ。特定企業しか手は出せない領域と考えていました。

やりかた次第で道は開ける ~あるベンチャー企業の取り組み~

ある日テレビを見ていたら、アクセルスペースという会社が 超小型の人工衛星 をつくっていることを知りました。その会社は当時ウェザーニュースと手を組み、気象データをとる ビジネスを短期間で始めて いました。しかも、作ろうとしている衛星のサイズは超小型。 衛星自体も安くつくる ことができると言うのです。そうなると、衛星データもかなり安く手に入ります。「 これはビジネスになる かもしれない。」そう考え、知事に新しいビジネスとして人工衛星を提案しました。

描いたシナリオは産学官連携 ~自治体発のブランドづくり~

福井県はモノづくり企業が非常に多い 県です。ですので、まず「モノ」である 人工衛星を開発する こと。 そして、衛星を使った、 データビジネスを立ち上げる こと。事業としては、この2つを柱に据えることに決めました。

ほぼ1年かけて事業を推進するための組織も検討し、「福井県民衛星技術研究組合」をつくりました。 組織的に産学官連携 が行われることを意図して構成した組織です。

衛星を開発するグループには、アクセルスペース(衛星ビジネスを始めるきっかけをつくってくれた会社。上述)に入ってもらいました。あとは福井県のものづくり企業です。衛星データ利用のグループには、ネスティ、福井システムズ、福井ネット、富士通の4社です。富士通を除いた3者は、どこも人工衛星なんて初めて。先行知見なし、ほぼゼロからのスタートでした。

また、事業費の負担は、県が3分の2。残り3分の1は事業者です。県に事業者の意気込みを見たいと言われ、こうなりました。結果、このプロジェクトに参加する企業は、1社につき2千5百万円支払っています。大きな投資です。絶対に失敗できない。必ず成功させて、他県に展開を図るところまでいかないといけない。一段と強く覚悟が決まった気がします。

ぶれない軸をもつ ~ならではのサービスを企画する~

私たちが打ち上げるのは、 「県民衛星」 です。県民のためになるサービスであることが重要です。
暮らしに役立つ事業 を衛星で作らなければなりません。そこで考えたのが、以下のビジネスです。

  1. 防災アプリ

    ハザードマップ、ご存じですよね。自治体が配布している地図です。危険区域に色付けがされています。私たちは、それに衛星情報を重ねます。今、危険な区域はどこか。どこに行けば安全なのか、リアルタイムにわかるようにします。

    山などの画像は、がけ崩れなどの様子が遠目にはわかりづらい。ですので衛星画像だけでなく、至近距離はスマホ、近距離はドローン、交易は衛星など、画像を組み合わせて情報提供することで、安心・安全な生活の営みに貢献することを考えています。

  2. 営農支援

    衛星データで、土壌の状態分析をすることができます。土の状態を色で見分けることができ、栄養が足りなければ追い肥をする、といった指導ができます。また、稲の生育状態を確認し、発育が十分であれば、今刈り取るなど、作業指示もできます。そういった、営農支援を行うことができると考えています。

  3. 観光アプリ

    農作物の生育状態と同様、花の開花時期なども衛星画像からわかります。桜の花見などは、1週間しか最適期間がありません。せっかく来たのに散っていた、などというと来ていただいた観光客の方もがっかりされてしまいます。そこで、「今が見ごろ」「開花まであと1週間」など、衛星画像でタイムリーな観光支援ができないか、考えています。

夢は47都道府県でする宇宙ビジネス ~各県1基ずつ衛星を打ち上げる~

衛星を一基打ち上げ、同じ軌道でまわすと、3~4日で一周します。それでようやく、同じ地点の画像が撮れます。日々の変化をリアルタイムに採取するには、複数の人工衛星が必要なのです。

考えてみてください。同じ軌道に47基、地球をぐるっと囲う形で人工衛星が打ち上げられてる姿を。そうなれば、毎日同じ地点の画像が手に入ります! リアルタイムな情報提供が可能になります。

一基目は、福井県 があげます。 二基目は茨城県 で打ち上げませんか!

宇宙という空間は、変化が激しく、過酷な環境です。人工衛星は堅牢でなければなりません。衛星の開発は、大変に難しいものです。ですが、福井県には、大変充実した試験設備もあります。ぜひ福井まで、設備利用に来てください。

そして、茨城県さんには、「宇宙ビジネス創造拠点プロジェクト」があります。
ぜひ 一緒に、宇宙ビジネスを盛り上げていきましょう!

Guest speaker

【講演者】
福井県民衛星技術研究組合 理事長
株式会社 ネスティ 代表取締役
進藤哲次氏

【略歴】
昭和61年株式会社ネスティ代表取締役に就任、現在に至る。一般社団法人福井県情報システム工業会名誉会長、福井県IT産業団体連合会会長、 福井県民衛星技術研究組合理事長を務める。本講演では、主に福井県民衛星を活用した衛星データとハザードマップ等の地上データを組み合わせた県民のための防災システム、及び 衛星データを活用した新ビジネスについての課題等を講演予定。

グラメモ:
セミナーで話されたことのメモ書きです。参加されたかた、参加できなかったかたに、当日の内容を少しでもお伝えしたいと、手描きで記録しました。
ふりかえり、内容確認にお役立てください。

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