開催日:2019年8月29日(古河)/ 2019年9月4日(日立)
レポート
セミナー

今回レポ―トするイベントは、出張セミナーです。ホームであるコワーキングスペース(水戸)から、古河と日立の2か所に出かけ、開催しました。
会場は、古河では商工会議所。日立では日立地区産業支援センターをお借りしました。
講演のテーマは、
製造業におけるIoT
(Internet of Things)です。
ここ数年、製造業にもIoTが取り入れられ、いくつもの企業で
デジタル時代のモノづくり
、トライアルが始まっています。
「いやいや、それは大企業の話でしょう? ウチみたいな中小には関係ない。」そう言われている企業も多くあると耳にしますが、今回の講演は、
そういった固定観念を払拭する内容でした!
講師は、富士通株式会社の高鹿初子氏。 IoTのエキスパートならではの視点から、IoTを取り入れ、儲かる会社への足がかりをつくる、中小企業の
取り組みを事例で紹介します。
IoTで何ができるのか
「IoTやAIですごいことができるんだろう。我が社にもIoTを導入してくれ。」上司からそんな無茶を言われたこと、ありませんか。
残念ながらIoTは、そこまで簡単ではありません。
IoTにできるのは、
モノや情報が滞留せずに流れる仕組みをつくること=ムダをなくす
こと。ムダをなくし、効率を上げて、お金の源泉をつくることです。
そう考えると、魅力的に思えてきませんか?ではここで、実際に取り組まれた事例をいくつか紹介していきましょう。
稼働率を上げる ~IoTとAIを用いて設備稼働状況モニタリング~
取引先から増産要請があったとします。現状の機械設備で、かつ同じ方法で生産する場合、工場を増床、膨大な設備投資をしなければ要求に応えられません。 現状の設備で、いかに生産効率をあげるか。いまの機械の稼働時間を調べ、一つあたりの生産時間を短縮させ、総生産量を増やすことができれば、増床せずとも取引先の増産要請に応えることができます。そこである町工場では、以下のような取り組みを行いました。旭鉄工さんの事例です。

i Smart Technologies
上の図は、実際に作られたプロトタイプです。工場の動きをプラレールに置き換え、製造ラインを 監視する仕組みを疑似的に作りました。信号灯(光)や機械の動きをセンサーを用いて捉え、 機械の動いている時と止っている時間を調べることができます。この仕掛けを実際の設備に実装 し、稼働状況のモニタリングを実現したのです。
IoTにできることは、止っている時間を把握すること。
なぜ止まっているのか(原因の解明)、どうしたら稼働率があがるのか(改善方法)は、人間が考えます。
生産を管理する ~スマートフォンで生産数を把握~
ある町工場では一日の終わり、就業時間を終えるタイミングで、その日の生産個数をカウントしていました。 その時点で、その日の生産目標に達していなければ、残業し、達成するまで働くスタイルです。 もし、機械が動いた数を自動的に数え、生産済の部品個数や1個あたりの生産時間がリアルタイムでわかったら、どうでしょう。 作業者はいつでも生産数の進捗がわかります。進捗にあわせて人員や作業の調整を行えば、残業は発生しにくくなります。 そんな仕組みを作った事例を紹介しましょう。武州工業さんです。
(例)スマートフォンを利用した機械動作情報収集装置

【注】
①端末を動作収集を行う機械の摺動部、②両面テープなどを用いて端末を貼り付け、③端末をWebプログラムに接続し、
表示プログラムにアクセスすることで、④機械の摺動情報をグラフ化でき、生産性の見える化を簡単に実現。更に、データを
CSVファイルとして出力し、EXCELでの詳細分析もすることもできる。
※端末は5年ほど前の旧機種でも快適に動作するためコスト数千円/台での導入が可能。
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一個流しの多品種少量化が進んでおり、IT、IoTを駆使した独自の管理システムを開発した
-
組織全体を管理するものではなく、個々の従業員の気付きを大事にしつつ、効率的に作業が行える仕組みを、安価なセンサーやモジュール、タブレット端末等を活用して自社構築した
複数の企業をつなげ、サプライチェーンの高度化を図る ~地域全体の生産性向上~
取引先から増産要請があったとします。現状の機械設備で、かつ同じ方法で生産する場合、工場を増床、膨大な設備投資をしなければ要求に応えられません。 現状の設備で、いかに生産効率をあげるか。いまの機械の稼働時間を調べ、一つあたりの生産時間を短縮させ、総生産量を増やすことができれば、増床せずとも取引先の増産要請に応えることができます。そこである町工場では、以下のような取り組みを行いました。旭鉄工さんの事例です。
(例)燕市で行われた実証実験

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一つの製品を製造するために、複数の企業が部品製作を行うため、複数企業をまたがる必要がある
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地域全体としての生産性向上に向け、複数企業の間をどうつなげるかが課題
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複数企業の生産進捗をリアルタイムに共有
IoT導入の成功は、導入前にあり ~目的を明確にする~
やみくもにIoTを導入しても、データが増えるだけです。
大事なのは
、何のために、何をしたいのか、
目的を明確にすること
。
生産効率をあげるために稼働状況を把握したい、生産管理するためにリアルタイムに生産個数を把握したい、など、自社の製造ラインで
課題を明確化
し、それを
解決する手段としてIoTを導入
することが大切です。
そのためにはまず、
経営者が現場を巻き込み、しっかりと話し合う
こと。課題感を共有すること。そして、その課題を共通認識として全社でもち、
「何とかしよう」と一丸となって取り組む、組織風土
を根気よくつくりあげていくこと。目的(課題)、技術(解決方法)、組織(モチベーション)
10年前に比べ、IoT導入のハードルは低くなりました。
安価にセンサー等を購入してツールを自作することもできますし、簡単にためせるIoTキット(MESH等のセンサー類)も販売されています。
何をするのに、いくらかかるのか、試算もしやすくなりました。試しやすい環境になっているのです。
まずは何ができるかを知り、試してみてください。集めたデータから何がわかるのか。データ活用について、検討してください。始め方に正解はありません。
自社だけではじめるもよし。専門家(ITコーディネータ、ITコンサルタント等)と組んで始めるもよし。自社だけで立ち上げることがおぼつかない場合は、
専門家に頼むのもよいでしょう。その他に、地域のスキームを活用する手もあります(例 産:自動車・重工・電気等の産業、官:補助金や制度等、学:大学、高専、専門学校、公:公設試等)。
早く取り組むと
、それだけ
ノウハウが蓄積
します。
それが競争力
につながります。そしてこれは、社長のリーダーシップなくしては実現できない種類の投資です。
試行錯誤することこそがノウハウであり、財産
です。一日も早く一歩踏み出し、IoTで新ビジネスの創出、ならびに生産性向上を実現していきましょう。

【講演者】
高鹿初子氏
【略歴】
富士通株式会社
製造業のシステム担当
中小企業診断士の資格を持つ
ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)では、中堅中小企業アクショングループに所属。その他、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブIVI)では中小企業の競争力強化に関する研究会に所属して活動中。
RIETI IoTによる中堅・中小企業の競争力強化に関する研究会で執筆された、中小企業のIoT導入事例集。
Amazon から購入できる。
モデルケースとして、以下の事例等が掲載されている。
(例)
青木和延株式会社日東電機製作所取締役社長
→ ロボットでハーネスの部品締結
正田勝啓株式会社正田製作所代表取締役会長
→ 社内の仕組み見直し中
金森良充株式会社ダイイチ・ファブ・テック代表取締役
→ 機械の稼働状況の実績収集
鈴木清生株式会社東京電機技術グループ新エネ開発チーム課長
→ タブレットを導入して作業状況を入力、リアルタイム集計

グラメモ:
セミナーで話されたことのメモ書きです。参加されたかた、参加できなかったかたに、当日の内容を少しでもお伝えしたいと、手描きで記録しました。
ふりかえり、内容確認にお役立てください。