開催日:2019年8月7日 - 8日
レポート
講座

8月7日~8日は、【ITエンジニアコース】データ分析の基礎講座です。
デジタル技術を活用してビジネス成果を生み出すにあたり、カギとなるのはデータです。さらに、AIを含むデータ分析技術を活用することは、データ保有者にとっての
比較優位性が確立されます。
数日間にわたるITエンジニアコースの冒頭として、データを語れるエンジニアの第一歩を踏み出していただきました。具体的には、データ活用を成功裡に導くための一連のプロセス・勘所、トラディショナルな統計学からAIで利用される機械学習までの多様なデータ分析アプローチの観点を習得いただきました。
データから価値を生む
データ分析の世界では、GIGO(Garbage In Garbage Out)という概念があります。「無意味なデータを投入すると、無意味な結果が生まれる」という意味です。ここで得られる観点は2つあると考えます。1つは「有益な結果を生むには、良質なデータが必要である」という、 データ設計・前処理 の観点です。もう1つは「有益な結果が何であるかを考える必要がある」という、 分析のアウトプットとビジネス価値との接点 の観点です。これらの観点を踏まえた上で適切な分析手法を適用することによって、データから価値を生むことにつながります。

データ活用を成功裡に導くには、いくつかの考慮事項があります。今回は、「3つのP」の要素としてまとめました。それぞれ、Process(プロセス)、People(人材)、Product(技術)、を指します。
プロセス | : | 計画/データ準備/データ分析/活用 |
技術 | : | データ収集/蓄積/加工/分析の各技術 |
人材 | : | IT/分析/業務(ビジネス)の各専門家 |
プロセスにおいては、青写真レベルでも 計画 を立てることが重要となります。技術においては、 加工 についても技術確保が欠かせません。人材においては、 業務の専門家 を含んだチーム構成が望ましいです。
計画を立てる際には、ニーズ/シーズ/データのいずれかを起点として、 「データを活用して解決したいこと」のアイデアを発想します。その後にアイデアを計画に落とし込む段階では、次の観点を活用できます。
Direction | : | 利活用できるデータ |
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Process | : | 加工・分析手法 | |
Output | : | 分析結果 | |
Solution | : | 業務への貢献 |
これらの整合をとった計画を立てることにより、価値のあるデータ活用につながります。
なお、ProcessとOutputを記述するにあたっては、分析の諸技術の知識が求められます。そのため、講座内では「分析で何ができるか」、「その分析のために人間は何を準備したり解釈する必要があるか」を中心に、次の分析アプローチを学習しました。
要約 | : | データの特徴を把握する |
クラスタリング | : | データをグループ分けする |
統計的検定 | : | グループ間の差を検証する |
回帰分析、分類など | : | データ間の関係性を把握する / 未知のデータを予測する |


「So What?」を問い続ける
データ活用のプロジェクトは、数理的に物事が一直線に進むものではありません。人間が考え、解釈し、決断することが多々あります。たとえば、次のようなことが挙げられます。
計画フェーズ | : | どのような目標設定にするか? 目標の実現に向けて、リソースをどのように分配するか? |
データ準備フェーズ | : | どのようなデータを収集するか? 得られたデータに対して、 どのような加工 を施すか? |
データ分析フェーズ | : | どの分析アプローチ/手法 を選択するか? 分析結果を どのように解釈 するか? |
活用フェーズ | : | どのような施策を立案するか? 施策の推進にむけて、リソースをどのように分配するか? |
データの加工・分析においても、人間が脳に汗をかきながら考え、解釈することが求められます。
棒グラフを例に、解釈の例を挙げます。右図は、残業時間を横軸に、従業員数を縦軸にとり、等級で色分けしたグラフです。このグラフからでも読み取れること、そこから仮説を生み出せることがいくつかあります。
-
≪事実≫10時間台(~20h)が最も多い
⇒≪仮説≫繁忙期にしては少ない数字のため、定常的に残業する習慣が身についている? -
≪事実≫等級が上がるにつれて、残業時間も上がっている
⇒≪仮説≫等級に仕事が張り付いており、後進育成に手が回っていない? -
≪事実≫60時間未満が大半を占める
⇒≪仮説≫60時間を超えないように推進している施策があり、一定の効果を得ている?
分析のアウトプットができたことで満足せず、そのアウトプットから何が言えるかを常に問い続けることが重要です。つまり、 「So what?」を問い続ける ことが求められます。

講座の中でも、分析結果を基に各自で考察し、周囲のメンバーとディスカッションする場を幾度も設けました。データ分析が無味乾燥としたものでなく、人間の考えが多分に求められることだと体感いただけたかと考えます。実プロジェクトにおいても、データを武器に語れるエンジニアとして、ビジネスサイドの方々との共創を推進いただければ幸いに存じます。


富士通ラーニングメディア 塙 陸一郎
人材育成を専門とし、AI・Analytics関連技術の知見・ノウハウを活かし、「人と組織の成長」を軸としたインストラクション及びコンサルティング活動を行う。
- AI・Analyticsを含むデジタルテクノロジーの活用セミナー及びメンタリング
- IoT、機械学習を利用した地域創生プログラムの実施
- データサイエンティスト企業内育成体系の構築
- 学習データ分析を基にした、同データ活用モデルの構築